開発ストーリー(粘弾性測定機ベスメーター:Vesmeter®)
中核のビジネスとなった粘弾性測定機ベスメーター E-200DT、E-100HB
開発のきっかけ:お客様の声から始まった挑戦
ある日、弊社の“お肌油分水分測定器”を納入している化粧品メーカー様から、こんなご相談をいただきました。
「化粧品開発のベースとなる人の皮膚の状態を、より精度高く測定できないだろうか?」
この問いに私たちは真剣に向き合いました。お客様の課題を解決することこそが、私たちの使命。弊社のコア技術を活かし、新たなアイデアを形にするべく、すぐに開発に着手しました。
そして、試行錯誤の末、皮膚の状態を数値化できる原理確認機の作成に成功したのです。
次なる課題:標準の確立
しかし、開発はここで終わりではありません。測定精度をさらに高めるために、標準物質による校正管理が不可欠でした。そのためには、安定した材料のサンプルが必要となります。私たちは大手化学メーカーに問い合わせを行い、物性の異なるサンプルを作成していただくことに成功しました。
こうして、弊社の測定機器での評価を軸に共同開発がスタート。
試行錯誤を重ねながら改良を加え、ついに据え置き型“ベスメーター E-200DT”が完成しました。
創業したてのものづくりベンチャー企業であった弊社を信頼し、協力してくださった大手化学メーカー様には大変感謝申し上げます。
新たな展開:異業種からの期待
この技術は、シリコーンゲルの評価指標としても活用できる可能性があることが判明。そこで“ベスメーター E-200DT”の技術紹介記事を発表したところ、思いがけない反響がありました。なんと、自動車タイヤメーカーからお問い合わせをいただいたのです。
「現場で使用できるハンディータイプは開発できないか?」
据置型の機能に加え、“緩和時間”の測定機能も求められていることが分かりました。私たちはこのお客様の声に応えるべく、新たな開発に踏み出しました。
支援を受け、次のステージへ
さいたま市産業創造財団様のご支援を受け、国から助成金を獲得。わずか半年の開発期間で、現場で手軽に使えるハンディー型の“ベスメーターE-100HB”を完成させました。
その結果、埼玉県工業技術センターでの採用が決まり、開発のきっかけとなった自動車タイヤメーカーにもご採用いただくことができました。その後、口コミが広がり、他のタイヤメーカー様やゴム関連企業様からの引き合いも増えていきました。
さらなる進化:化粧品業界と学術研究への応用
当初、皮膚測定用途として構想されたベスメーターは、まず工業用ハンディー型として世に送り出されました。
その高い精度と実用性が評価され、平成17年度 埼玉県ベンチャー企業優良製品コンテストで優秀賞を受賞。この受賞を契機に、ベスメーターはさらに多様な市場のニーズに応える形で進化を遂げていきました。
特に、化粧品メーカー様や大学付属病院からの強い要望を受け、当初の目標であった皮膚用粘弾性測定機の開発に本格的に着手。
開発には、大阪大学の嶋先生をはじめとする多数の研究者のご協力をいただきました。先生方との共同研究を重ねる中で技術が洗練され、ついに現在の皮膚用ベスメーターの形が完成しました。
この開発は、私たちだけの力では成し得なかったものです。嶋先生をはじめ、多くの先生方が貴重な知見と情熱を注いでくださったことに、心より感謝申し上げます。そのご支援なくして、今の技術革新は実現できませんでした。
現在、この技術は膠原病領域の研究をはじめ、皮膚医学、化粧品・医薬品開発の分野で幅広く活用されています。科学的エビデンスに基づく物性データを提供できる唯一の皮膚用の粘弾性測定機として、研究の信頼性を支える重要な一台となっています。
お客様と共に進化し続ける
この製品は、単なる測定機器ではありません。
お客様の声を原点に、お客様と試行錯誤を重ねながら誕生したものです。
私たちは、これからも技術を磨き続け、お客様の課題解決に寄り添い、貢献していきます。そして、より良い未来を築くために、新たな挑戦を続けていきます。